『権利のための闘争』イェーリング著

 『権利のための闘争』は有名な法学書の古典です。1872年に公刊されています。


 古典なので,ちょっと前の法学部生はみんな読んでいたようです。大学等でドイツ語の原著を購読した方もいるでしょう。
 しかし,現在の法学部生で読んでる人は1%もいるんでしょうか。データはありませんが,司法試験合格者でもほとんど読んでないような印象があります。マルクス『資本論』と同じ感じなんでしょうか。

 前提として,Recht(レヒト)というドイツ語には「法」という意味と「権利」という意味の二つがあるとされます。なので,訳者は「権利=法」と訳しています。本来ならタイトルも『Rechtのための闘争』なのですから『権利=法のための闘争』となりそうですが,そこは訳者が慣例に従って『権利のための闘争』としたそうです。レヒトの客観的意味が「法」,主観的意味が「権利」とされます。

 「闘争が権利=法の本質に属する」というのが,この本におけるイェーリングの主張です。「法」についても「権利」についても,闘争が本質的な要素だというのです。

 「法」を作るときには利害調整の必要があります。たとえば福祉のために税金を上げる法律を作ろうかという場面を想像してみましょう。福祉向上派と財産擁護派との間で利害がぶつかり,まさに「闘争」が生じるはずです。この闘争に勝って初めて新たな「法」が生まれるのです。

 

 本書のメインは,その次の「権利」についての闘争です。権利が不当に侵害されている場合には,断固とした精神をもって闘争しなければならないとされています。義務でもあるとされています。なぜかは本書をお読みください。

 

 岩波文庫で本文140ページと薄く,読み通すのにさほど苦はないと思います。講演をもとにしたということもあってかイェーリングの熱さが伝わってくる文章です。ところどころの皮肉もぴりぴりきいています。一度読んでみてはいかがでしょうか。有名な古典なので本棚の飾りとしても使えます。